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2013年3月23日

「仕事に対する愛と情熱とプライド」若しくは新卒に向けたスピリチュアルな話

そろそろ新卒研修とかどうしようかとかで、エンジニア陣でわたわたしたりしています。「Songmu先生にはスピリチュアルな話をしてもらわないといけませんね」みたいなことを言われてなんかスピリチュアルキャラとして定着しているのもどうかと思います。

去年も「『仕事に対する愛と情熱とプライド』ってお題でソーシャルゲームチームの新卒向けに話してください」とか研修担当の人に言われて、なんでそんな熱いキャラとして認知されてるか謎だったんだけど、それで30分くらい話しました。

それが結構評判良かったみたいで、直接はあまり言われなかったんだけど「研修の時の先輩の話の中で一番印象に残っている」って言ってくれている人が多いって話を2年目の人から又聞きで知って嬉しく思っていました。

とか思っていたら、hisaichi5518の人は「なんかすごくいい話してた覚えはあるんですけど内容全く覚えてません」とかsoh335の人は「話したことすら覚えていない」とか言っていて、まあそんなもんですよね、っていう。

とはいえ、今年何か話すにしてもあまり去年と同じ事は話したくないなってのがあって、幸い去年の発表資料が残っていたのでそれを元にどんなことを話していたかを思い出しながら差し支えない範囲で書き起こしてみることにしました。

ちなみに以下の内容は僕個人が一年前に感じていたことであって、所属している会社の見解とは一切関係ないということを念のため申し上げておきます。


Songmuです。現在とある野球ゲームのリードエンジニアと最近出たばかりのゲームのインフラ周りのチューニングとかをやっています。

リードエンジニアって何をしているかというと、開発だけじゃなくて、スケジュール管理とか、ディレクションとかプロジェクトの動き全体を取り仕切るようなことをしています。

今のプロジェクトチームは売り上げ的に成果を上げているだけじゃなくて、社内のソーシャルゲームの中で、一番バグ発生率が少ないし、CS関連のチケットを0に保つことにプライドをかけています。ソースも一番モダンで綺麗だと自負しています。

現在、中途に入って2年目になったくらいです。Perlに関してはゲーム事業部では一番詳しいと思います。Perlが好きで今の会社に入ったようなもんです。

ただ、Perlに詳しいってのは決して技術力が一番あるってわけではないです。この辺りは非エンジニアにはわかりづらいかもしれません。他の事業部にはもっとPerlに詳しい人もいます。更に言うとPerlに関してだったら、そこにいる新卒のsoh335さんとかhisaichi5518くんの方が詳しかったりしますね。

野球が好きで、中国語が話せます。ロードレーサー2台とボウリングのマイボールを2個持ってます。これはどうでも良いですね。


愛と情熱とプライドっていうお題だけど、自分のことはたいしたことないと思っているからあんまプライドとかは無いかも知れないです。エンジニアとしては底辺だと思っています。

仕事に対してはドライなつもりです。土日とか働くことを薦めたくないし、そうなってしまっているのは、仕組みとしてイケてないからであってそういう働き方をしていることにたいして自己満足に陥ってはいけない。

個人の馬力で何とかしてしまうのはイケてないし、長く働いている人は無能だと思っています。僕自身も。

非日常に高揚感を感じるのはオナニーでしか無いし、成功体験としてしまうのは危険。徹夜してやりきったみたいなのに満足するんじゃなくて恥じるべき。

とは言え、僕自身は夜遅くまでコード書いたりするのは楽しかったりするけど、そういう状況を俯瞰的に捉えられた方が良い。

行列のできるラーメン屋に何十分も並ぶことは馬鹿馬鹿しいけど楽しくもあったりするみたいなようなこと。

「今年もきっと戦後最大の危機です」って社長が言ってたことがあって、これはすごく面白い言葉だなーと。決して揶揄の文脈じゃなくて、それはもうそういうもんで、そう捉えてそれに乗っかっちゃったほうが面白いんじゃないかって話。

そういうことを自覚しながらバランスをとることが大事だと思う。

仕事ってのは試合のようなものだけど、試合だけじゃ強くなれないと僕はスポーツとかやってきた経験から思ってるから、長時間仕事するのはやっぱ良くないと思っています。


今の会社の文化と仕事に関して去年強く感じたのは

  • 何をするかより誰とするか
  • のっかる文化

の2点。

入社式の時に代表の一人がわけわかんない英語か何かを発話してたけど実は良いこと言ってて、あれは岡本太郎の言葉で

情熱があって何かを始める人なんて少なくて、普通は何気なく始めたことに無意識のうちにのめり込んで、そこから情熱が生まれる

ということです。これは本当にそうだなーと思って、僕自身一年間働いてきて、周りは本当に良いやつらばかりで一緒に働くのがすごく楽しかった。入社した時はソーシャルゲームとか好きでも嫌いでもなかったけど、今は情熱を持って取り組んでいます。

入社してしばらくしてから野球ゲームの新規プロジェクトチームにジョインできたのがすごく運が良くて、それによって僕自身がすごく野球が好きだったってことを思い出すことができて、開発しているゲームに対して思い入れを持てたし世界観に入り込むことができました

あと、プロフェッショナルなエンジニアとか、凄腕のデザイナーとかがいるすごくいいチームで開発ができた。

前の会社までは僕はデザイナーと近くで仕事をしてなかったけど、今の職場は美大出身とかの本気のデザイナと机を合わせて仕事できる。これはエンジニアにとって、モノつくりをする上でとてもよい環境だと感じています。

そのチーム中で僕自身も必要とされたから、自分のプロダクトに誇りと責任を持たざるをえないし、その期待に応えることがモチベーションにもなっています。

そのプロジェクトが結果として成果を上げることができていることもあって、すごく良い成功体験をさせてもらえたと思っています。

今年から引き継いでリードエンジニアをやってるけど、その位置に居るのは僕自身の意識が高いとかじゃなくて、いろいろな意味で運が良かった。運が良かったけど、それは状況に素直に乗っかっていったから掴み取れたものではあるかなとは思っています。

今運営している野球ゲームは、ユーザー同士でチームを組んで試合が行われたりするんだけど、こちら側が思いもよらないようなドラマチックな展開が生まれたりします。強いのになかなか優勝できない悲劇のチームとかが、念願かなって優勝したりすると運営側も盛り上がったりします。普通に野球の試合を見ている感覚ですね。

ユーザーと一緒にゲームの世界を創り上げている感覚があって、それは経営理念の「つくる人を増やす」にもつながっていると手応えを感じています。


今ソーシャルゲームに対しては色々ネガティブなことが言われていて、僕自身も抵抗が全くなかったといえば嘘になります。ただそこに何故飛び込んで来ることができたかと言うとこれまでの経歴が無縁ではありません。

僕はかなりダメな人生を送ってきてて、大学はSFCだったけどコンピュータとかあまりやらずに中国語ばっかやってました。一応機械翻訳の研究とかもやってる体でしたが基本適当でしたね。卒論も書かないで卒業しました。

僕が就職活動してた時期は、俗に言う就職氷河期だったんだけど、SFCの学生ならSEには比較的なりやすかったようです。実際に受けてないからわからないんですけど。

でも大学でコンピュータをあまりやってなかったし、周りが(僕よりもコンピュータを扱えない人でさえも)どんどんSEになる中、僕は尚更安易にSEとかになりたくないみたいな屈折が生まれてしまって、出版社志望を気取ってたんだけど、結局どこも内定取れずに就活に失敗しました。大分厨二ですね。

それで、大学卒業後に中国に行ってそこでITベンチャーの立ち上げ手伝ったりとかしてました。結局ITかよって話です。で色々あって、給与未払いみたいなことが起こりそうになって、お金が底を尽きて日本に帰ってこざるを得なくなった。突き詰めると僕自身の実力不足です。

それでお金がないからどうしよう、でももうITの仕事はコリゴリだとか思って、結果として見つけたのが語学学校。駅前留学とかそういうやつです。

中国語のスクールマネージャの営業職に応募したんだけど、連絡が来ないのでダメ元でこっちから電話したら英語と中国語のオンライン/電話レッスンの営業担当兼システム担当全般みたいなポジションで雇ってもらえることになった。結局ITから別れられません。

後から聞いたら応募フォームの情報チラ見で落とされてたみたいなんだけど、電話した時に担当の人が再度情報を見なおしたら以前IT系の仕事をしていたことが目に止まって、そういうポジションの人がちょうど足りなかったから採用してもらえたようです。

そんな感じで、わらにもすがる気持ちで入った語学学校業界なんだけど、入った当初は業界を馬鹿にしていた部分がありました。馬鹿なOLとかリーマンを喰いものにする業界だろ?的な。

ところが実際は教務の人とかは圧倒されるくらい情熱を持っていて「日本人が英語・中国語を話せるようにするにはどうすればいいか」という命題に真剣に取り組んでいる。営業の人も本気でお客様の事を考えられる人が結果を残すことが多かったです。

「ネイティブ講師つけておけば大丈夫だろ」的な適当なことをやっている学校もありますが、僕が勤めていたところはそうではありませんでした。

口先ばかり上手い営業の人は新規契約率は高めだったとしても、更新率が低くなる。ちゃんと契約後にお客様の事を考えてケアできる人は更新率が高くなります。実際、新規契約率は水物だけど、更新率は努力次第で大きく上げられるから、そっちのほうが成果につながるんですよ。

入る前は全然未知で偏見すら持ってた業界だったけど、入ってみるとそういう風に実は得るものが大きかった。その時の体験があるから、何かと言われてるけどソーシャルゲーム業界に入っても得るものはきっとあるだろうなと思うことができました。

ちょうどその頃は、とある語学学校が色々消費者問題とかを起こして経営破綻したとかそういう問題で騒がれた時期でもあって、世間の語学学校業界に対するネガティブな印象がすごく強かった。なので今のソーシャルゲーム業界に似ているなーってのも感じたので逆にソーシャルゲーム面白そうだなと思った部分もあります。

その事件もあったのでお客様を搾取するモデルは結局長続きしないなってのを確信しました。誠実に運営することが最終的に成果につながるっていう僕自身のポリシーを、単なるキレイ事以上のレベルでこの頃から信じられるようになった。僕自身嘘をつくことが苦手なのでそう信じて動けたほうが気分が良いってのもあります。今もそう思いながらゲームを運営しています。


それでなんで今エンジニアやってるんだ?って話になります。これまでの話の通り、避けていたつもりのITが何故かずっと付いて回ってきてたんだけど、それでも「ITはあくまで仕事の手段でしかない」とか厨二臭いことを思っていたわけです。ただ、それが段々楽しくなってきて「あ、僕Web好きだ」って認めた瞬間に僕の中でブレークスルーがありました。すごく視界がひらけて自分のやりたいこととかが明確になった。

それで転職してSIer勤務を経て今の会社にいます。後から思えば、ツンデレじゃなくて素直にさっさと「好きだ」って認めちゃったほうが良かったなと思います。


仕事に対する愛の話なんですけど、僕は最後は「愛」だと思っています。

これは人それぞれスタイルがあると思うけど、僕はこれまであんま先のことは考えずに、妻に対する愛だとか自転車に対する愛だとかプログラムに対する愛だとかPerlに対する愛だとかプロジェクトに対する愛だとか、そういうものに突き動かされて生きてきたので、それが一番パフォーマンスを発揮する方法だと感じています。

ただ「仕事を愛しましょう」とかアホくさいことを言うつもりはないです。「愛国心を持て」という言葉みたいに滑稽ですからね。ちなみに僕は日本好きですよ。

束縛しようとしたって束縛できないし、束縛しようとするのは自分に自信が無い証でしかない。愛せる人になるのが大事だと思います。自分から愛するものにコミットするってだけで、愛させるとか愛してもらうとかどうでも良いのです。

その愛が単なる身勝手に終わらないためには「好きな事しかしない覚悟」を持つことが大事かなーと思っています。

よく「自分事化」とか「全部自分の責任」とかそういう言葉が社内では出るんですけど、間違ってはいないんだけどちょっと息苦しい感じがして嫌だなーと思う部分があって、僕としては「好きな事しかしない覚悟を持つ」と思っていた方が気分が良いなーと思っています。

よっぽどまともな判断力を奪われた悲惨な状態とかじゃない限り、自分の人生の選択に対して最終的に判断を下しているのは自分なんだから、それは結局アナタが選んだアナタが好きなことでしょってことです。

今僕はエンジニアとして働けていて、自分の好きなコトやっているのですごく充実しています。


僕は苦行が嫌いで、そういう自分を傷つけて自己満足みたいなのは低レベルなオナニーでしかない。仕事も一緒だと思っています。

僕はほぼ毎年ハーフマラソンに出てるんですけど、ハーフマラソンは楽しく走れるから出てるだけで、苦しみたいから出てるわけではないんですね。何の努力もせずにマラソンを走って、苦しんだ自分を褒めてやりたいみたいな人はまあ低レベルです。

それでも練習不足の時はハーフマラソンが苦行になっちゃうこともあって、それは結果としては色々反省するわけですけど、やっぱ良いことじゃないなーと思います。つらい思いはしたくないんで。

フルマラソンは苦行だから出ないようにしてるんですけど、フルマラソンが苦行じゃなくなったら自分としてはステップアップかもしれません。


仕事に対するプライドなんですけど「自分にしかできないことを見つけてそこにプライドを持つこと」が大事なんじゃないかと思っています。

そうは言ったものの「自分にしかできないこと」なんてそうそう見つかるもんじゃないと思ってしまうかもしれません。

でもそんなに難しくない方法があります。それは「レッテルに乗っかる」ことです。

僕の場合は例えば、コードが綺麗とかバグが少ないとかそういう「レッテル」を貼られるとそれに対してプライドを持つようになるし、バグをすぐ潰すようになる。

あとは、僕は今教育が得意とか、ドキュメンテーションが得意とかそういう「レッテル」を貼られていて、ホントは全然そんなこと無いんですけど、それに乗っかって、社内フレームワークのドキュメントを整備しなおしたりしました。

ただ、結局自分の評価ってのは他者が決めるってのが世の中の常だし、そういう「レッテル」が貼られるってのはどこかしらそういう側面なり素養なりがあるんだろうから、それに乗っかっちゃって強化してしまうのは結構有効なんじゃないかと思います。


エンジニアじゃない人も多いのでエンジニアって人種に少し触れておこうと思うんですけど、エンジニアは技術そのものが好きで、目的と手段が入れ替わってる人が結構多いかなと思います。技術に理解のない人は信用しない職人気質な人も多いですね。

エンジニアに限らないかも知れないんですけど、仕事だけじゃスキルが向上しない部分があるので、エンジニアの人は仕事以外でちゃんと勉強するとか、社外の人と交流を持つことも大事です。

この会社はWebクリエーターの会社ということになってるので、エンジニアに限らずHTTPは喋れないといけないと思います。喋るって言うと難しそうに思えるかもしれないけど、単にメッセージのやり取りの方法なのでどういうことをやっているかって感覚は持っておいたほうが良いと思います。

僕個人としては、プログラミングは今後必須スキルになってくると思うし、学校とかでも教えたほうが良いと思ってます。英語よりも大事なんじゃないかな。

まあそんな感じで気難しい人も多いですが、よろしくお付き合いください。


最後に感謝することについて話したいんですけど、僕は基本的に「自分にできないことが出来る人はすごい人」だと思っていて尊敬と感謝をしています。

なので、チームのメンバーとかもそうなんですけど、CSとか管理分門とかインフラの人たちには本当に感謝しています。

特にCSとか管理分門とかインフラの人達とかは僕等のクリエイターとしてのパフォーマンスを上げる仕事をしてくれているわけで、感謝してもしきれないですね。

普段は目につかないものとか見えないものに対する想像力ってのはクリエイターにとってすごく大事だと思うんですけど、CSとか管理分門とかインフラとか普段あまり接点のない人達がどれだけのものを僕たちに与えてくれているのかよくよく想像してみると良いと思います。

ちゃんと感謝を伝えると良好な信頼関係を築くことができるし、信頼関係が築けていると建設的に意見をぶつけあって喧嘩することも可能になります。

ゲーム運営をしていると、CSチームと関わることが多くなるんですけど、僕はお問い合わせの最前面にいて対応してくださるCSの皆さんにはものすごく感謝しているし、CSの声はユーザーの声だと思っています。CSからくるチケットとかを丁寧に迅速に返すことがユーザーの満足度に繋がって、結果としてお金を使ってもらえる、ゲーム運営を長く続けられると僕は信じています。

もちろんCSの負担を減らすためにも、とにかく不具合は出さないことも重要です。

CSチケットを後回しにしたりとか、CSに共有せずにイベント始めたりとかそういうことを続けていると、CSチームと関係性が悪くなってしまいます。元々CSは常にユーザーさんとやり取りをしているので、どうしてもユーザーさん側の熱量に押されて感情移入をしてしまいがちな部分があります。

なので、CSと信頼関係が築けていないと、CSにも開発チームが悪者扱いされて四面楚歌になってつらくなりますし、運営にも支障をきたします。

逆にCSチームと関係性が築けていると、些細なバクの兆候とかも早めに伝えてくれるようになったりします。またCSがユーザー側に感情移入しすぎている時でも、信頼関係さえあれば、開発側の熱量をぶつけても建設的な意見交換ができ、開発側の意見も汲み取ってもらいやすくなります。

なので、感謝は人のためならずな部分もありますし、ちゃんと周りに感謝を伝えながら仕事をしていきましょう。

投稿者 Songmu : 2013年3月23日 23:13